INSTRUMENT 楽器へのこだわり

ピアノへのこだわり

ヤマハ G1B 1988年製

このピアノは製造されてから約30年経っております。
まずは、なぜ新品ではなく年数の経ったものを選んだのかをお話ししたいと思います。

製作技術の世界は試行錯誤を繰り返して必ず何かしらの進歩を遂げてゆくものだと思いますが、不思議と楽器の世界はそれに全ては当てはまらない事が多いようです。 耐久性やコストを下げて製作するという事に関しては進歩しましたが、楽器はやはり出てくる音が重要だからでしょう。
その最たる例がヴァイオリンのストラディバリウス、グァルネリ、アマティなどの名器です。
21世紀になっている今も17、18世紀に製作された物を最高峰の物と評価されて調整、修理して使われています。

同じヤマハのピアノでも今の物より30年前の物は鳴りが良く、そして遠鳴りしてくれます。 ピアノの場合は鳴りさえ良ければ、あとは調整によって様々な音に変えられます。
逆に鳴りが悪いと、どんな調整をしても無反応なままです。
もちろん木製楽器なので個体によって当たり外れはありますが、今回はこのような意図の元に鳴りの良い時代と設計の中でも当たりの楽器を探しました。

では、古ければ全て良いかとなるとそうではありません。
約230本の弦は70~80kgもの力で張られているので、当然のように金属疲労をおこしてゆきます。
弦を叩くフェルトで出来たハンマーは鋼鉄の強く張られた弦が相手なので段々変形して音質も劣化してゆきます。
弦とハンマーという2つの例をあげましたが、ピアノは多くの消耗品から成り立っているのでそれを必要な時に交換する事が必要かつ重要です。

今回作業した内容をお話ししますと、ハンマーで弦を叩いた打撃音を豊かな音に変えてくれる響板の塗装をし直しました。
塗装は木材が割れる事を防ぐための作業なのですが、現在はポリウレタン塗装という仕上げは非常に美しいですが硬い、まるで木にプラスチックをコーティングしたかのような状態になります。
このピアノには昔ながらのラッカー塗装という、上記に比べてやわらかく木材の振動を妨げない塗装を施しました。

次に、弦と低音の弦に使用される銅線はドイツのメーカーであるレスロー社、デーゲン社の物を使用し、低音の弦の製作はやはりドイツでスタインウェイなどの下請けをしているヘラー社に依頼しました。

弦を巻きつける鋼鉄製のピンもドイツのディアマント製の物を使用しています。

鍵盤においてタッチ感に影響をおよぼす鋼鉄製のピンとクロスが摩擦する箇所がありますが、クロスはカシミアの物を使用しています。

ハンマーはドイツのアベル社の物を使用しています。
音色を決定させるためにハンマーに針を刺したりするのですが、その状態次第でフェルトの質が素晴らしいので色々な音を出してくれるという、演奏者の可能性を最大限に引き出してくれる素晴らしい部品です。

以上、調律師の「ドイツかぶれ」が全面に出たオーバーホールがなされています。
もちろん、全ては音のためです。

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